蟹3

感想と怪文書

結婚相談所体験記

2021年中のいつかの話。
数年前に一度資料請求をしてそのままになっていた某結婚相談所的なところから、無料体験入会の案内がきた。無視しようかと思ったが、せっかく無料(登録料と会費が無料でマッチング料のようなものは別途)なので体験入会してみることにした。
「若い頃は一人身で満足していても歳を取ってから後悔する人」という話をしばしば見聞きする。今は自分がそうなるとは思えないが、先のことはわからない。10年前の自分に今の自分が想像できていたかといえば、全くできていなかったように。
そこで、今のうちに結婚に向けて何かしら行動したという実績があれば、後悔せずに済むのではないか。したとしても己を納得させることはできるのではないか。そういった考えである。もちろん、運命の人に出会える可能性がないわけではないし。
結論から書くと、当然運命の人などには出会えなかった。というか期間中1人しか会っていない。その程度なので大した内容ではないが、今後同じような経験はもうないと思うので一応顛末を書き残す。

ここの相談所では職員が仲介して女性に男性を紹介するという形でマッチングが行われる。会員自身でアプローチができないため自由度は低いが、個人情報は守れるし受け身の人でも安心。とのこと。
体験とはいえやることは本入会と同じなので早速面談しながらプロフィールを書く。「主夫希望」などと言える雰囲気ではなかった。薄めて「年収が弱いので経済的に自立している人を希望、その他の条件は概ね応相談」くらいにしておく。経済力を求める以上年齢は上になる可能性が高いとのお言葉を頂く。身長や体重なども希望できたが、とりあえず普通とだけ書いた。
女性の好みと言われてもうまく答えられない。ショートカットが好きとか貧乳が好きとかそういうのはイデア的な話であって(?)、現実の女性についてどうこうという気持ちはあまりない。もちろん容姿が良いに越したことはないが、結婚するなら中身の方がより重要だし、他人の容姿にとやかく言える顔面でもないし。
じゃあどんな中身ならいいのかとなるが、やはりふわふわしたことしか言えない。今までの(乏しい)経験上、親しかった(付き合ったとは言ってない)異性の性格やタイプは色々で、結局タイミングや知り合うきっかけや運次第のような気がする。

自身のプロフィールでは、やはり学歴に注目が集まる(?)。収入なき学歴など力なき正義と同じく無意味なのに…と思った。他に大した特徴がないとも言える。記入欄のない出身高校まで余白に書かされた。田舎では下手な大学よりも地元の名門高校のほうが印象が良いと噂に聞くが、あながち嘘でもないのかもしれない。
趣味欄に映画漫画ゲーム読書と書いたら「ゲームは今時みなさんスマホで何かしら触られてますから特段書かなくていい」などという建前でやんわり消された。すみません。
ちょうどこの頃、絵でも描こうかと思って安い画材や鉛筆を買ったばかりだったので、実態はほぼゼロなのに「風景画(最近始めた)」ということも書いてみたところ、思った通りウケが良かった。その後何度か描いてみようとしたのでまるきり嘘でもないということにしたい。結局すぐ触らなくなってしまったが。
婿養子可にマルをつけたらここも食いついてきて、意外と希望者がいるのだという。改姓に抵抗感がないという意味で書いただけなんだけど、なんとか家の跡を継ぎ先祖代々のナニナニを~みたいな話が来たらどうしようかと思った。(来なかった)
写真はどうするのかと思ったら事務所の応接スペースでおばちゃんが普通のデジカメで撮った。元々大したツラではない上に仕事帰りで心の準備もなかったのでまあまあ酷い写りだった。

アドバイザーのおばちゃんはいかにも世話好き話好きで、世が世なら近場の若い男女を軒並みくっつけてしまおうかという風格があった。苦手なタイプ。こういう所では重要な人材なのだろう。
出来上がった身上書は改めて自分で読み返しても魅力を感じないなあとつくづく思ったが、結果的に体験期間中に2件の面会希望があった。結局1件は日程が合わずキャンセルになったがとりあえず1件会ってみることになる。


最初の面会は相談所内の応接室で小一時間ご歓談という決まり。こういう機会は初めてゆえ緊張若干しつつ、そもそも期待値がないのでどこか気楽な態度で向かう。
相手は年上30代半ばの方。プロフィールの詳細は伏せるが俺の書いた紙捨てた?というくらい希望条件と合致はしていない。条件と言っても収入くらいしか指定してないが。
外見も人柄も本当にごく普通の人という印象。良く言えば優しそう。悪く言えば地味。俺もそういう感じに言われると思うのでお似合いといえばお似合いだったのかもしれない。
ともかく、コミュ障っぽいとか性格に難ありとか身だしなみが悪いとか、第一印象でわかる範囲そういうマイナスな感じはなかった。
互いの身上書の情報を頼りに趣味の話や仕事の話をした。趣味は合わなそう。風景画の下りはやはりウケが良いが半分(9割)嘘なので巧妙に避けた。食べ物の好き嫌いで少し盛り上がった。好き嫌いはその人のパーソナリティやエピソードが出がちなため話を広げやすい気がする。
意気投合とは言えないが、時折笑いも交えてスムーズに進んだと思う。いくら俺が根暗だとはいえ、やろうと思えばこの程度のコミュニケーションはできる。しんどいのでしたくはない。
内心どう思っていたかはわからないが、アドバイザー経由で先方は次回(ランチ)も希望とのこと。もう一度会いたいと思うほどでもなかったが、さりとて会いたくないと思うほど悪い印象もなく、せっかくの機会なので承諾した。

2回目の面会前に体験期間終了後継続課金するか否かの選択を迫られる。対応などには特に不満はなかったが、紹介件数が2か月で2件と少ない(俺自身が不良物件なだけ)し、たった1人と会って話しただけの活動で既にめんどくささが圧勝していたので、本契約はしないことにした。
退会が決まった状態で会うのも悪い気がしたが、退会が決まっていても退会日までは面会自体は可能だそう。もし交際が決まれば退会はするけど既定のマッチング成功料金を支払うのだと思われる。
異性と二人で食事など10年振りなので店選びから厳しいものがあると思われたが、かつて友人と行っておいしかった店がLINE履歴に残っていたので助かった。どうせ次はないし、気取らず食べたいものを食べることにした。

2回目は相談所で待ち合わせ、俺の車でお店へ。交際が決まるまではお互いの連絡先や住所は教えてもらえない。ストーカー化対策だろうか。
初対面の時も思ったが、趣味方面は全く合わない。合わないなりに、両者知らないことを知る機会として和やかに話せた。とは思う。その他仕事の愚痴を交わしたり、友人の話をしたり、前回同様悪くはない感じだった。店は味を重視しすぎてデートの雰囲気が薄く失敗したかと思ったが、デートがしたかったわけではないので良しとする。相手氏は何度か来たことがあるとのこと。敗北。
帰り道で若干道を間違え、年下の可愛いところ的なアピール(?)をしてしまった気がするが、意外とウケが良かった。
結局、悪い人ではなかったが交際か結婚かという程でもなく、申し訳ないが相談所経由で丁重にお断りさせて頂いた。向こうもお断りだったのかどうかは伝え聞いていない。

こうして俺の結婚相談所体験は終わった。知らない人と喋って飯食っただけなので本当に大したことはしてない。体験のため入会金は0円、マッチング費として1件8,000円の出費。もっと手軽にマッチングアプリでよかった気がするが、プロフ画像にできる自撮りを一切持ってないので登録しづらい。
プライベートで女性と会って話すのはかなり久しぶりだったが、気まずい空気は(たぶん)なかったし、女性経験に乏しい男性にありがちな会話に困るとか噛み合わないとかそういう感じも(たぶん)なかった。
性別関係なく、人に会うこと自体が億劫という感覚は拭えなかったのでやっぱりダメかも。かつては男女問わずフォロワーとオフ会とか言ってホイホイどこでも行ってた気がするが何が違うのだろう。若さか、心理的な親しさか、うつ病の有無か。

振り返ってみると、終始お試し気分が抜けなかった。というか実際お試し入会なので間違ってはいないが。まずは形からと思ったが、どこか他人事だった気がする。相手の方ごめんなさい。
本気で結婚したいという意思があればまた違った結果もあったかもしれない。結局「自分を救うのは自分自身」「他人を変えるより自分を変えろ」などと同じく、自らの内に意欲や願いがなければ何事もうまくいかない。無欲の勝利なんていうのは偶然の産物なのだろう。
異常独身男性(女性)諸氏の参考になればと思い書いてみたが、長いわりに中身がなさ過ぎて何の参考にもならん。結婚したいという気持ちがまず大事なんだ、と言いたいところだが、願望たっぷりでも結婚できず悩んでいる人もたくさんいるので気持ちだけの問題でもないらしい。難しい。