蟹3

感想と怪文書

ロンカ帝国は非情か

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FF14には蛮族クエストというサイドストーリーがあります。各地の亜人種族との交流を描いたものになっているんですが、直近で実装されたのはキタリ族というネズミっぽい人たち(人?)のお話でした。彼らは短命ゆえに知識や記憶を記録し後世に伝えることを是としており、かつてはその気質を活かし古代ロンカ帝国の書記官を任されていたと言います。
エストの大まかな流れは、地下遺跡の調査を通してキタリ族とロンカ帝国の関わりを明らかにしていく、というものです。そしてその調査序盤に発見された石板をめぐって、2つの見方が提示されました。ひとつは「ロンカ皇帝がキタリ族を征服し支配下においた」という説、もうひとつは「皇帝はキタリ族を外敵から庇護し友好関係にあった」という説。
石板はどっちともとれるあいまいな図柄ですが、僕は同時に表示されるシステムメッセージが気になりました。
“あなたの選択により、これから復元される石碑の彫刻と、今後語り継がれる歴史の一部が異なっていきます。”
要するにこれは、Nyan Manyaちゃんの印象ひとつで彼らの歴史が決定されるということです。この時点では史料は石板一枚だけ、いくらNyan Manyaちゃんが誉れ高き光の戦士であり世界を股にかける英雄にして屈強なる闇の戦士だとしても、一存でロンカの「歴史」を決めてしまっていいものなのでしょうか。
メタ的には単なるマルチルートの分岐でしかないんですが、これはMMOなので決定は不可逆です。この世界のキタリ族たちは、なんとなく勘で選ばれた「歴史」を後生大事に継承していくわけです。
それってどうなんでしょうか。

一騎当千の暗黒騎士でありベテランの召喚士でもあり新進気鋭の彫金師でもあるNyan Manyaちゃんは残念ながら歴史学者ではないので、キタリ族の歴史について責を問うのは酷でしょう。しかし、キタリ族の方々におかれましては一族のアイデンティティに関わることなわけで、もう少し慎重な姿勢を見せてもよかったんじゃないかと思ったり思わなかったり。
その後も発掘で新たな石板とかが出るたび、2通りの解釈が提示されプレイヤーがどちらかを選ぶという形らしいのですが、なんの議論もなく一個人の印象で決めるのはやはりちょっと抵抗があります。*1
選ばないことには先に進めないので仕方なく選択しましたが*2、恐らくこの世界の史実はそういうことになったようです。さながらシュレディンガーの猫のように、選択した瞬間にこの世界のロンカ帝国史は「征服」に決定したというわけです。

このゲーム、実際のところ世界設定ガチガチのガチ勢(?)が作っていて年表とかもあって分厚い設定本が既に2冊も刊行されているんですよ。プレイヤーキャラクターの周りにある「世界」が奥深いからこそ、MMOとしての体験も深くなるというものです。それなのにその世界設定自体(今回で言えばロンカ帝国の歴史)にプレイヤー自身が干渉するような形にされてしまうと、興覚め、はちょっと言い過ぎかもしれませんが没入感は損なわれるなあ、と思いました。
シナリオ上選択肢を入れたいなら、例えば選択はあくまで仮説として留め置いて、調査を進めるとどうやら征服or友好だったようだ(どっちが史実かは運営様が決めればいいことです)と明らかになり、仮説が当たったルート外れたルートに分岐すればよかったんじゃないでしょうかね。

*1:まだ最後までやってませんがきっと最後はプレイヤーの選んだ選択肢をまとめたものがなんかこう通史みたいになるんでしょうね。

*2:根拠がなくて選びようがないんですが、とりあえず帝国を名乗るからには帝国主義政策だろう、原初世界におけるアラグ帝国と対になる存在なら同様に強権的国家だろう、という推測から征服説を採りました。