蟹3

感想と怪文書

今更思い出すデュープリズム

デュープリズム』というゲームを御存じだろうか。
今年の10月14日で発売20周年を迎えるプレステのソフトである。この話10月14日に書きたかったのに普通に忘れてたよね。
そんなにたくさんゲームをしてきたわけではないが、人生で一番好きなゲームソフトを一つだけ決めるとするなら、いくつか悩みはしても『デュープリズム』は揺るがないと思う。それくらい好きなゲームだ。エンディングまで10~20時間くらいだが繰り返し何回もやって100時間は遊んだと思う。悲しいかな売り上げは伸びなかったらしいが、今なお熱烈なファンが20周年を祝っているように、遊んだ人の記憶に刻まれる名作ゲームであると言えるだろう。

ジャンルはアクションRPGで、プレステらしい温かみのあるポリゴンの3Dキャラクターが飛んだり跳ねたりして戦う。古代の強力な魔導士「エイオン」たちが残した「遺産」と呼ばれる伝説の魔法道具を探す物語。「ルウ」と「ミント」という2人の主人公がいてどっちかを選んでゲームを始める。概ね同じストーリーを異なる視点から追っていく感じで、どっちを選ぶかで行くダンジョンや途中のイベントが変わり、物語の結末も少し違う。両方のキャラでエンディングを見るとちょっとした真エンディングというかエピローグがあって、誰がどう見ても続編を示唆している。続編はないが。

ミントは魔法攻撃ができて見た目がかっこいいし遠距離から殴れて戦いやすい。最初は少ないが最終的に結構な種類の魔法が使えてどれを使おうかと悩む。隠し魔法もあり。性能バランスは微妙だが弱い魔法ばっかり使っててもクリアは余裕。なぜならラスボス戦は専用魔法なので。
ルウは倒した敵モンスターに変身してその技を使えるというカー〇ィみたいな特殊能力で戦う。特定のモンスターに変身しないと進めないとか倒せないみたいなギミックがある。変身モンスターが弱くてもクリアは余裕。なぜならラスボス戦は専用攻撃なので。
レベルアップみたいな要素はなくてダメージを食らえば食らうほど最大HPが上がり、魔法や変身(後のMPを使う技)を使えば使うほど最大MPが上がる。上手ければ最大値が低いままでクリア可能だしヘタクソでも苦戦してるうちに勝手に強くなれる。
マリオみたいなジャンプして崖を飛び越える系がちょいちょいあってそこが人によっては難関かもしれない。あまりにも連続で落ちまくると向こう岸にリスポーンする救済措置があるという情報を十数年前にネットで見たような気がするが真偽不明。

「遺産」の力で世界征服を狙うミント編は明るくコメディ調、殺された家族を復活させたいルウ編は重厚でシリアスなストーリーになっており、だいたい同じ話でも雰囲気が違って一粒で二度おいしい。世界征服ってなんなんだよマジで。個人的には、道中はミント編のほうが楽しいが結末はルウ編のほうが好きなのでミント→ルウの順にやるのがいいと思う。ルウ編ではミント編で触れられなかった世界設定みたいなのも出てくるので、続編につなげやすい。続編はないが。
壮大な世界を広げる感じではなく、片田舎の町を拠点にした素朴な感じの冒険。とはいえ終盤はバトル物の少年漫画かよというくらい熱く王道な展開になっている。キャラクターも多くはないがみんな癖があって魅力的だ。どこかエキゾチックな音楽もありがちな洋風ファンタジーとは一線を画す世界観を演出している。要するにシナリオもキャラも音楽も素晴らしい。ボリュームたっぷりとは言い難いが短い尺でも話が綺麗におさまるので、5~10巻くらいで完結する漫画が好きなら絶対に合うと思う。俺のことだが。

デュープリズムは小学生の時に出会って中学生になっても遊んでネットを触るようになってからも(主に続編への期待を込めて)いろんな関連サイトを見たり調べたり、10年近いあいだ興味を失わずに見ていた作品になる。キャラクターデザインの人のサイトは更新されなくなっても定期的にチェックしていたのだがある時ついに消えてしまいとても悲しかった。デュープリズムがなければ個人サイト全盛期だった当時のネットの雰囲気を知ることはなかったと思う。二次創作という概念もデュープリを通して知ったし、なりきりチャットとかいうのも知った。(別に知りたくはなかった)
かつて存在していた「たのみこむ」という署名サイトみたいなところで「続編希望ゲーム」カテゴリ第一位に長らく君臨していた『デュープリズム』であったが、いつの間にかサイトが消えるまで叶うことなく、そしてそのまま20周年を迎える。売り上げとか開発チーム離散とか諸々の現実的な事情で無理なことはわかっていても、多感な十代の俺はこんなに素晴らしいものがなぜ理解されないのかという絶望を抱えることになった。20年経って大人になり諦念に変わったかと言えば全くそんなことはなく、絶望は溶けて消え去り穏やかな心で今もずっと『デュープリズム2』を待ち続けている。