蟹3

感想と怪文書

サマータイムレンダ

ジャンプ+で連載中の『サマータイムレンダ』という漫画が面白いという話。
ウェブで3話まで(と最新2話)、アプリなら全話(期間限定?)無料で読める。
以下、3話まで読んだものという前提で書きます。

ジャンプ+は『SPY×FAMILY』しかり『彼方のアストラ』しかり、時々やたらクオリティの高い漫画をしれーっとぶっこんでくるから油断ならない。
にもかかわらず、72話にもなるまでスルーしていたのは、なんだか爽やかな語感のタイトルと水着の美少女というイメージイラストのせい。ひと夏の淡い青春恋物語的な漫画と勝手に決めつけていた。そういうのは読まないことにしている。
あらすじを読めばそんな感じではないとすぐわかるんだけど、いや、そうはいってもこのイラストはどう見ても青春だろ。俺は悪くない。
一応淡い恋もあるにはある。

実際は、離島を舞台にしたサスペンスだ。
幼馴染の死をきっかけに、島に渦巻く異変に気づいてしまった主人公が、その原因である謎の存在「影」に立ち向かう。
この影と言うのが、人間(を含むあらゆる物体)を写し取ってコピーしオリジナルを殺害することで成り代わるという凶悪なやつらで、とにかく怖いし強い。
遥か昔から島に存在しているらしく、民俗伝承の怪異めいた雰囲気を醸し出しているが、殺すときは普通に包丁で刺したり銃で撃ったり、オカルトなんだかリアルなんだか。
それに対して主人公は「死亡すると時間を巻き戻す」という今度はSFちっくな特殊能力を持っており、死に戻りしながら真相究明と影の打倒を目指す。
という感じで3話時点では伝奇なのかホラーなのかSFなのか、というところ。
まあなんにせよ「離島」で「人知を超えた異形」とくれば、あとは古文書を紐解いたりして島の封印されし伝説を云々、寺の住職が「お前たち山に入ったのか!?」云々みたいな(そういうの大好き)のを期待してたところ、話が進むにつれて今度は異能バトルじみたアクションまで飛び出してくる。もう何漫画かよくわからない。

何漫画かはよくわからないが、伏線を投げっぱなしにしたり話が破綻することは全然なく、物語そのものがブレている感じはしないのがよい。
いわゆるループものであるが、2周目で違う言動をしたことで敵の対応が変わってめちゃめちゃになったり、タイムリープならではの展開もちゃんとしてて面白い。
いきなりSF的な要素はどこから出てきたんだと思ったが、どうやらこれも影に関係するらしい。
ありがちな妖モノの類のように見えて、「抽出」だとか「生成」だとか「ストレージ」だとか、やけに現代っぽいところが独特の持ち味になっていると思う。死に戻りもたんなる妖術とか超能力で済ませず、「サマータイム」を「レンダリング」しているのだ。
モノだけでなく時間を写し取るやらなんやら。物語は未だ真実に到達していない。
今の最新話時点では影の親玉みたいなのが判明しつつあるものの、その目的も正体もまだはっきりしていない。
これからさらに面白くなってくると期待できる。是非読んでみてほしい。


ところで、この漫画は作者の故郷和歌山県を舞台にしていて、随所で和歌山弁?や和歌山名物らしきものが雰囲気作りに一役買っている。
友ヶ島という実在する無人島がモデルのひとつなのだが、実はこの友ヶ島に行ったことがある。

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友ヶ島(2014年4月24日)
前の会社で数か月和歌山の支社にいて、退職してから実家に戻るまでの間にせっかくだからどこか観光しようと思って、その時に行った。
旧日本軍の施設跡があり、自然に飲み込まれつつある煉瓦造建築がラピュタっぽいと人気のスポットになっている。観光地化していて無人島の割には賑やかではあったけれど、なかなか雰囲気があり異形の存在が棲んでいてもおかしくない感じではあった。

もちろんこれを書いている俺が影だというわけではない。もちろん。
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